『 COUNT DOWN 』


慌ただしい足音が響く。
ルフィだ。
バタバタと、目的の場所へと一直線に走っていく足音。
行き先は確認しなくても分かってる。


昼寝中のゾロんとこだ。


「ゾロー!寝てんのか?!起きてんのか?!」
「つっ…!ルフィ!おまえ見て分かんねぇのかっ!寝てんだろうが!!」
いきなり耳元で叫ばれたゾロは飛び上がって答えてる。
「なんだ。起きてんじゃねぇか。」
「おまえが起こしたんだろ!?」
何とも噛み合わない会話。
や、いつものことだけど。


「なあなあ知ってっか?!」
「…………何を。」
ルフィはゾロの顔を覗き込んで嬉しそうに話し始めて。
ゾロは諦めたように聞き手になった。
まあなんだ、これもいつものこと(笑)


「今日はゾロの誕生日の120日前なんだってさ!!」
ゾロの切れ長の目が大きく見開かれ、また元に戻って小さく溜め息をつく。
「…で?」
「で?って、ゾロ分かんねぇか?ゾロの誕生日まで120日しかねぇってことなんだぞ?!」
「それがなんだっつうんだよ。」
ルフィの言ってることの意味が分からないゾロは盛大に溜め息をする。
もちろん俺にも分からねぇ。
ルフィの感覚は特別なものみたいでこういうことはよくある。


「たった120日ぽっちで、離れてた二年間を埋めるんだぞ?!」
「…はあ?」
…はあ?
ルフィの両手はグーで、力一杯本気で言ってるのは分かるんだが、如何せん、意味が分からない。
「毎日10回はしてた『ちゅー』が二年間も出来なかったんだからな!」
ゾロの眉間に皺が寄っていく。
ああああ、こえ〜顔になってる(汗)
「これを120日で何とかしようと思ったら、毎日70回ちゅーしねぇと追い付かねぇんだってよ!あ、ちゃんと今日の10回も足してな!!」
おいおい、誰だ、ルフィにこんな入れ知恵したのは。
まあ、大体検討はついてるっつうか、他に考えらんねぇけど。
ゾロの眉間に渓谷が確認出来た。


「そんでよ!」
「…まだあんのか。」
「あの気持ちいいやつはな!」
ルフィがそう言った途端、ゾロの顔が真っ青になってすぐ真っ赤になって。
声にならない声?で口をパクパクして。
あらら〜。
これが世界一の大剣豪を目指してる男が見せる顔かよ?
ゾロほどの男でも、ルフィの手に掛かるとかわいいもんだ。
その顔見てりゃなんのことかぐらい想像つくし、ゾロの反応も最もだ。


「ま、まさか…」
ようやく話し出したゾロ。
「『それ』も、回数合わせるとか…」
「何だゾロ、分かってんじゃねぇか!なら話早ぇな!」
満足気にニッコリとルフィは笑った。
「毎日14回はしねぇとな!」
「じゅっ…!!?」
…耳を疑う回数だ。


「ルフィ!おまえ馬鹿かっ?!そんなに出来るわけねぇだろ!!」
「そんなのやってみねぇと分かんねぇだろ?」
相変わらず、ルフィはニッコリ。
まあ、ルフィとゾロなら或いは…とか思っちまう俺は、この二人のイチャコラぶりに相当感化されちまったんだろうな。
「俺は無理だ。」
ゾロがふざけんなと言わんばかりにゴロリと寝転がった。
うん、気持ちは分かる。
でもそれで納得するルフィじゃねぇよなぁ。


「ゾロは…離れてた二年間、寂しくなかったのか?俺がいなくても、平気だったのか?」
「…どうだったか、もう覚えてねぇ。」
「俺は…寂しかったぞ。二年間もゾロに触れることが出来なかったんだ。当然だろ?」
寝転がるゾロの顔を、ルフィは覗き込んで言う。
その表情は、酷く切なそうで。
そんな顔をさせてんのがゾロだなんて。
ちょっと妬ける?
おおっと、今のは内緒だ。
そんでそのルフィを見て困ったような、それでいてちょっと嬉しい?みたいな顔をしてるゾロ。
なんつうか…可愛い?
おおっと、今のも内緒だ。


「……まあ…なんだ、その…」
「ん?」
「…会いてぇなとは思った。」
「ちゅーしたいとかは?」
「………思った。」
「気持ちいいことしたいとかは?」
「な、んなこと…」
「思わなかった?」
「……思ったよ。」


そこまで聞くと、ルフィは満足そうにニッコリ笑った。
「だよな!!」
と言うと、ゾロをガバッと抱き上げた。
…お察しの通り、お姫様抱っこだ。
あのゾロをお姫様抱っこ出来るなんて、すげぇなぁ。
ああ見えて、かなり体重はあるよな、筋肉で。
「なっ!?何すんだ、ルフィ!降ろせよ!!」
「何で?」
「はぁ?!何でって何でだよ?!」
そのままご機嫌なルフィはトレーニングルームへと向かう。
「一杯出来るからな!!」
ヒィッて聞こえた気がした。


そんなゾロと目が合った。
「ウソップ!おまえからもルフィに何とか言ってやってくれ!!」
「無理。」
「ウソップ、てめえ!」


無理なもんは無理だ。
ああなったルフィを止められる術を俺は知らない。
ゾロには悪いけどな。


俺は両手を合わせて、
「南無…」
と呟き、イチャコラな二人を見送った。

 


2012.03.04


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・・・・なんだこれ(笑)
自分で読み直して笑っちゃったよ、おいおいw
これね、ゾロの誕生日の120日前ってことが分かった時・・・2011年の7月くらいかな?
不意に思いついたんでしょうね、こんなバカな話(笑)
でもなんか、ありそうじゃない?


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